かんごし父ちゃんのナース駆け込み寺!

このブログは認定看護師として集中治療室で勤務するかんごし父ちゃんが、困ったナースや看護学生が気軽に学べる内容の情報や2児のパパとして育児に奮闘する日記をゆる〜く描いたブログです。

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高カリウム血症だ!GI療法ってはじめて聞いた・・

皆様こんにちこんばんは!

 

休日はトイレ掃除から始めると〜ちゃんです。

 

トイレ掃除とキッチンの流しの掃除が大好きなワタクシ。

 

汚いところが好きという訳ではないんですが笑

 

掃除してピカピカになった瞬間が気持ちが良いのです笑

 

今日の話題は高K血症について。

 

高K血症の際の治療の1つとしてGI(グルコースインスリン)療法を思い浮かべる方は多いと思います。

 

GI療法は高K血症に対する緊急措置として実施されることが多いと思います。

 

しかし、グルコースインスリンを投与することでなぜ血清K値が低下するのか疑問に思った方も多いと多います。

 

でも今さら他の人には聞きづらい・・

 

ということで本日は高K血症とGI療法についてお話していきます!

 

 

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<本日の内容>

 

 高K血症はどのような患者さんに多い?

皆さまは高K血症の患者さんに遭遇したことがありますか?

 

アメリカの医療保険データベースを元にした観察研究では2010〜2014年の期間で観察した2,270,635例の患者さんを解析すると2014年の高Kの有病率(その時点で疾患を持つ割合)が1.57%であったとしています。

Curr Heart Fail Rep. 2019 Jun;16(3):67-74.

 

この数字は様々な疾患を持つ患者さんの中の有病率ですので、意外に多いと思いました。

 

さらに、心不全やCKD(慢性腎臓病)の方では同年の有病率が6.35%だったそうです。

 

 

心臓と腎臓の働きは密接に関係しています。

 

例えば、急性心不全になったとします(急性非代償性心不全;ADHF)。

 

すると心臓のOutputが低下することで腎血流が低下します。

 

さらにはRAS系(レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系)が活性化し、結果として心臓・腎臓に負担がかかるようになります。

 

皆さまがご存知のとおり、腎臓はKの排泄に深く関わっています。

 

そのため、心不全や腎臓が障害されると高K血症になるリスクが高まります。

 

上記の疾患を管理している病棟の方は、臨床で遭遇する確率が高いと言えるかもしれません。

 

 

高K血症の症状

高K血症と言えば「テント状T波」ですね。

 

高K血症ではV2-V4でT波の増高(尖った・傾いた)が見られます。

 

私が見た総説には前向き研究で血清K>6.0mEq/Lの患者のうち、46%にしか心電図変化が見られなかったとする論文も引用されていました。

*総説:PMCID:(PMC5661285)

 

つまり高K血症の中にはテント状T波が見られないケースもあることを理解すべきですね。

 

高Kは房室結節・his・プルキンエ繊維の伝導遅延を引き起こします。

 

そのため高K血症は

  • 心臓の過興奮性(心室頻拍,心室細動)
  • 心臓の抑圧性(徐脈,房室ブロック)

を引き起こす可能性があります(こわー)

 

なので、特に血清K濃度が6.0mEq/Lを超える場合は緊急でKを下げる治療をする必要があります。

 

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高K血症の原因は3つで考える

ちなみに高K血症の定義は血清K濃度が5.5mEq/L以上の状態とされています。

 

高K血症の原因をざっくり分けると

  • 過剰摂取(Over intake):果物などKが豊富に含まれる食品等の過剰摂取
  • 排泄障害:腎臓におけるKの排泄が減少
  • 細胞外へのシフト:細胞内のKが様々な要因により細胞外(血漿など)に移動

 

過剰摂取と排泄障害については分かりやすいと思います。

 

特に集中治療領域ではAKI(急性腎障害)を併発し、排泄障害から血清K値が上昇するなんてことはよく見受けられます。

 

今日は3番目の細胞外へのシフトについて説明していきます。

 

■Kはどこにいる?

体の中にはKが存在していますが、そのほとんどが細胞内(約98%)に存在しているため細胞外のKは1〜2%と言われています。

 

つまり採血で見ているK値は体内に存在する僅かなKを見ていることになります。

 

そして血中のK値が上昇しないように、生体はNaポンプなどの様々な機構を利用して厳重にKを管理しています。

 

ではどのような時に細胞外,つまり血中にKが移動するのでしょうか?

 

Kが細胞外へ移動するケースの1つとしてアシドーシスがあります。

 

アシドーシスとは血液のpHが酸性に傾いている(正確にいうとアシデミア)病態を示します。

 

アシドーシスは言い換えると、血液の水素イオン(H+)濃度が上昇している状態とも言えます。

 

血中のH+を低下させるために、H+を細胞内に取り込みます。

 

それと同時に細胞内からKを細胞外(つまり血中)に汲み出します。

 

これによってアシドーシスから二次的に血中K濃度が上昇します。

 

 

本題にもなりますが血清K濃度を下げる方法としては様々あります。

 

 

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原因にもあげたように、Kを下げる方法としては

  • 排泄を促進する
  • 細胞内へシフトさせる

 

これによって血中のK値は下がります。

 

排泄を促進するには?

 

皆様がご存知のループ利尿薬などにより腎臓のK排泄を促進する。

 

つまり腎臓におけるKの排泄を促進します。

 

 

では細胞内へシフトさせるには?

 

そうです。

 

GI療法を行えば良いのです。

 

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GI療法は一次的な対応であることを忘れずに!

話の流れ的にお分かりかと思いますが、GI療法は血中にあるKを細胞内へシフトさせる治療なのです。

 

なぜGIを行うとK値が下がるのか?

 

結論としてはインスリンの働きによってKが細胞外(血中)から細胞内へ移動します。

 

インスリンって血糖値を下げるイメージが代表的かと思いますが、実は重要な役割があります。

 

インスリンがなぜ血糖値を下げるか?

 

というと、グルコースを栄養素として細胞内に取り込むからです。

 

その際に同時にKを細胞内に一緒に引き込む作用があるんです。

 

つまりインスリンがなければグルコースを栄養素として活用できずに体内でケトン体が産生されます。

 

つまり飢餓状態と同じ状態となります。

 

1型糖尿病の方が生じることが多いDKA(糖尿病性ケトアシドーシス)はインスリンの絶対的な欠乏によってグルコースが細胞内に取り込めないために起こります。

 

つまり、GI療法というのはインスリンの性質を利用して、Kをひとまず細胞内にシフトさせて血中のK濃度をおさえようという治療と言えます。

 

すなわちインスリンを投与すれば血中のKは下がります。

 

それでは低血糖のリスクがあるめブドウ糖も同時に投与する必要があります。

 

 

GI療法を実施した場合は、その後の血糖フォローは必要です。

 

先生が指示だしを忘れていたら、1時間後くらいにそっと血糖を報告してあげてください。

 

デキナースと思われますw

 

ちなみにインスリン分泌が正常な方であれば、ブドウ糖を投与することで自身のインスリンが分泌されて血中のKが低下することがあります。 

 

GI療法の注意点としては利尿剤などと異なり、細胞内にKを引っ込ませるだけで体内のKの総量は変わりません。

 

リバウンドという言葉がある通り、高K血症を引き起こす病態が改善しなければ根本は解決しません。(つまり時間が経てば再び血中のKが上昇する)

 

例えばアシドーシスが原因で血中のKが上昇しているのであれば、アシドーシスの原因となる病態を治療しなければ高Kは改善しません。

 

あるいは腎臓の障害が主要な原因であれば、血液透析を導入しなければ解決しません。

 

なので、GI療法は高K血症による致死的な合併症を防ぐための一時凌ぎだということを看護師も忘れてはいけません。

 

ということで、今回は高K血症とGI療法についてお話しました。

 

GI療法についてご理解いただけたでしょうか?

 

ではまたお会いしましょう♪

 

では歯磨いて寝ろよ!

by看護師と〜ちゃん