呼吸回数は急変の予兆?!の巻
皆様こんにちこんばんは!
最近パスタ作りにはまっていると〜ちゃんです!w
さて今日のお話は呼吸回数と急変予兆についてです。
皆様の施設でこんなこと言われたりしてませんか?
"呼吸回数"を必ず測りなさい!
"呼吸回数"は急変の予兆として大事です!
施設によっては呼吸数の測定率が何かの目標に上がってたりなんかして(もはやカオスです)
ただ、ですよ?
臨床現場で働く身としては、全ての患者に1分間呼吸数を測るって、20人受け持ちがいればそれだけで20分・・・。
ちょっと気が引けますよね。。
施設の上層部からは呼吸回数を測定しろ!と言われるけど、なんで大事かについては教えてくれない!そんな施設もあると思います。
と〜ちゃん自身もとりあえずやれ!と言われても納得できましぇん!
看護学生の時には毎回測っていたけど、臨床で測定されることが少ない呼吸回数。
今回は、、
- なぜ呼吸数が大事なのか?
- 急変とどう関連するのか?
この点についてお話ししようと思います!
この記事を読むことで、呼吸回数を”ただ測る”のではなく、上手に臨床で活用できるようになります!
<今日の内容>
呼吸の側面から見る呼吸回数
呼吸が悪くなれば呼吸回数が上昇する。
これは簡単に想像できると思います。
苦しくて呼吸回数が多くなるというメカニズムをまずは見ていきましょう!
正常な肺(肺胞)ではマスクメロンの皮のように、肺胞の周りに毛細血管がビッシリ張り付いています。
そこで、大気から取り入れた酸素を毛細血管に拡散して動脈血として心臓に送ります。
そして、二酸化炭素炭素を呼気として放出するというガス交換を行っています。
ちなみに、これらは臨床で酸素化と換気という2つの言葉に置き換えられます。
酸素化はSpO2とかPaO2を見ていて、換気というのはPaCO2の状態を見ています。
酸素化が障害されている患者さんの肺では、なんらかの理由でこのガス交換が障害されています。
酸素化障害のパターン
- 拡散が障害されている(拡散障害)
- 肺胞に空気入っても血流がない/少ない、又は換気のない/少ない肺胞に血流がある(換気血流比不均衡;VQミスマッチ)
- そもそも呼吸が弱く換気が上手くいかない(肺胞低換気)
- 酸素化されない血液がそのまま心臓へ到達する(シャント)
これについては分からなくて大丈夫です♪
では心不全で苦しい患者さんはどのような状態でしょうか?
当然、体の中の酸素が足りない!
となればたくさん呼吸をして大気を取り入れようとします(酸素需要の増大)。
結果として、呼吸回数が上昇します。
これは分かりやすいメカニズムですよね。
苦しそうな状態を見たら呼吸回数を測定しよう!となると思います。
しかしここからが重要で、呼吸回数が少なくなるとどうでしょう?
例えば、全身麻酔の術後の患者さんが抜管して帰室したとします。
特に苦しそうな感じはありませんでしたが、麻酔の覚醒が悪いように感じました。
その1時間後にSpO2が低下!意識レベルが低下しているのを発見!
結果として気管挿管となったという事例です。
この事例のキーワードは麻酔の覚醒が悪い、苦しそうな感じはない、意識障害を呈したということです。
結論からいうと、麻酔の覚醒不良で呼吸回数が減少(肺胞換気量の低下)→二酸化炭素が貯留→CO2ナルコーシス→意識障害→さらに呼吸が減弱→最終的に酸素化が低下という流れです。
そうです。帰室した際に、呼吸回数を見ていれば呼吸回数が少ない!
ということに気がついて急変を防ぐことができたかもしれません。
ここで重要なことは呼吸回数というのは、「見えないCO2を評価している」ということです。
酸素化はSpO2などで数値化できますが、気管挿管などされていなければCO2は数値化してモニタリングをすることはできないのです。
そこで、重要なことは呼吸回数や様式(浅いか深いか)を観察することで、CO2の上昇を予測できる可能性があるわけです。
呼吸回数の上昇だけではなく、低下も重要ですね♪
呼吸回数をここまで深く考えたことはあまりないかもしれません。
次は呼吸以外の要素と呼吸回数の関連を見ていきましょう。
急変と呼吸回数
ここからが本題です。
急変と呼吸回数がどう関連しているかです。
結論からいうと、急変前の患者さんでは8時間前になんらかの兆候が現れます。
その兆候の中で頻度の多い症状が呼吸の異常ということなんです。これは有名な論文(Chest.1990 Dec;98(6):1388-92.)から引用されています。
この論文が発表されたのは30年も前のこと・・。
だいぶタイムラグがありますね。
重要なことはどうして呼吸の異常が生じるか?ということです。これを明確にしましょう!
例えば敗血症をはじめとするショックに陥っていたとしましょう。
以前の記事でショックの定義を書きました。
ショックというのは、簡単にいうと各組織への酸素供給ができない状態です。
ここからが重要なんですが、酸素供給ができないとどうなるか?ということです。
生体にとって酸素はエネルギーを作り出すために重要です。
ICUにいる方は聞いたことがあると多いますが、乳酸=ラクテートって先輩とか医師がよく口にしてませんか??
乳酸は血液ガス分析(動脈血が基本)で測定することができる検査項目の1つです。
表示上はLacと表示されていることもあります。
ショックでは酸素需要が高まっている状態にも関わらず、酸素供給ができていない状態です。
そうです。酸欠になれば、エネルギーを生み出すために体内での嫌気性代謝が亢進して、血液中の乳酸値が上昇します。
そうすると乳酸は”酸”なので血液のpHが酸性に傾きます。
これをアシデミアと呼びます。
正確にいうと代謝性アシドーシスです。
*血液ガスについては別で解説しまーす!
しかし、以前の記事にも書きましたが、人間の体にはピンチになった時のリカバー機能=代償機能があることはお伝えしました。
当然、アシドーシスになった状態を放置はせずに、代償反応が発動します!
それが呼吸数の上昇なんです。
呼吸とアシドーシスって関係あるの?
と思ったあなた。
関係大ありです!
二酸化炭素は体にとって"酸"です。つまりCO2の上昇もアシドーシスの原因となります。
逆に言えばCO2が減少すれば、酸性からアルカリ性に傾きますよね?
CO2を減少させるには呼吸回数を増やして換気量を増やせばCO2は掃けて(減少)いきます。
お察しの通り、酸素供給ができずに乳酸が蓄積して酸性に傾いた血液を適正に戻そうとする代償反応の1つとして呼吸数を増加させてCO2を減少させていたのです。
このように、呼吸回数は急変の予兆と関係があるというのはこうしたメカニズムがあるからと言われています。
呼吸回数を見ていれば、心停止を起こす前に救える命があるかもしれないので、呼吸回数を測定しようと言われているんです。
皆様、納得できたでしょうか?
じゃあヤバイ呼吸回数って何回なの?
皆様は呼吸回数が何回になったらマズイ!と判断しますか?
こういう点も教えてくれないことが多いと感じます。
呼吸回数は文献によってばらつきがあります。しかも教科書でよくある〇〇〜〇〇回って、一体どうなったらヤバイんだよ!
と、曖昧な部分があると思います。
と〜ちゃんが後輩に伝えている指標は22回以上は要注意!です。
この22回はどこから来ているの?と思った人がいると思いますので解説します。
22回というのは救急外来で敗血症をスクリーニングするためのquick-SOFA(クイックソファ・キューソファと言ったりします)という指標から引用しています。
具体的にq-SOFAとは、感染症があるor疑われる場合において下記の2項目以上を満たす患者さんは敗血症とみなして早期に介入せよ!
という指標です。
<項目>
- 意識:GCS<15点(いつもより意識が悪い)
- 循環:収縮期血圧≦100mmHg
- 呼吸:呼吸回数≧22回/分
q-SOFAはICU以外で用いる指標とは言われていますが、指標が簡単な方が看護師としては分かりやすいですし、看護師が呼吸回数を測定する意義は診断ではなく何か起きている!
と急変を早期にスクリーニングすることです。
なので、指標が明確なのはとても大事なことだと思っています。
また、呼吸回数を測定するためのコツとして、患者さんと自分の呼吸を同期してみてください。
患者さんの呼吸を観察して自分もそのタイミングに合わせて呼吸をしてみるんです。
22回の呼吸回数って見た目にはあまり早いって感じないんですが、こうして同期させると案外早い!と体感すると思います。
こうしたコツって、教科書ではあまり書かれないんですよねぇ。
ということで、皆様呼吸回数の重要性と急変との関連は分かりましたでしょうか??
<まとめ>
- 呼吸回数は酸素化だけではなく換気(見えないCO2)を評価している
- 呼吸回数は急変と関連している(嫌気性代謝の亢進)
- 具体的な呼吸回数は22回を目安としよう
それでは、皆様の活躍を期待しています!
歯磨いて寝ろよ!w
by看護師と〜ちゃん