続!腹臥位療法 〜体位変換の実際とリスク編〜
皆様こんにちこんばんは!
緊急事態宣言の範囲が広がっていますね。。
ただ第一波の時の緊急事態宣言と違って
第一波の時と危機感に違いがあるのではないでしょうか?
これって新型コロナの対策(手指衛生やユニバーサルマスク等)がなんとなくでも分かったからだと思います。
人間は分からないことに対して恐怖や不安を抱くものです。
つまり分からなかったコロナのことが分かってきてるということでもあるのかなと思います。
(真偽はともかく様々な情報が溢れてることは別の問題として・・。)
さて今回は前回に引き続き腹臥位療法(Prone Positionig)の続きです。
もし前回の記事を見ていない方は下記リンクを参照して下さい♪
今回は具体的な方法やデメリットについてお話していきたいと思います。
ちなみに方法については正解はありません。
施設によって方法は異なります。
なのでこの記事で紹介している方法が安全性や合理性を担保しているとは限りません。
そこだけは十分にご理解下さい。(責任は実施した側に帰属します)
では今日も一緒に学習していきましょう!
■本日の内容
腹臥位療法の方法
【事前準備】
- 多くは筋弛緩を投与した上で実施する
- 鎮痛と鎮静を確実に行う
これが大事です。
呼吸不全で苦しいうえにその状況でうつ伏せになることを想像すると・・
なので必ず鎮静(深鎮静)・鎮痛を確実に行い
さらには筋弛緩を投与することが大事だと思います。
ちなみに腹臥位療法は1回換気量を減らすことも目的の1つとお伝えしました。
呼吸不全の患者さんに深鎮静をかけたり筋弛緩を使用することの理由は
吸気努力をなくすことと1回換気量を抑えることです。
これは経肺圧(肺に実質的にかかる圧力)を低減すること、VILI(人工呼吸器関連肺傷害)を予防することが目的です。
この2つのキーワードが分からなくても大丈夫です。
換気量が増えれば肺を傷つける=1回換気量を抑えると肺の保護に繋がる
と思って下さい。
さて方法の続きをお話しします。
【手順】
STEP 1 人員配置とブリーフィング
まずはじめに人員を確保します。
看護師だけで行うことはなく医師も含めた多職種で実施すべきだと思います。
理想は医師・看護師・セラピスト(リハさん)が良いと思います。
概ねこのような配置で実施します。
頭側は医師が担います。
役割としてはメンバーのリードと気管チューブの把持です。
そして両サイドには看護師や医師が患者を体位変換したり持ち上げたりする係と
クッションを挿入する係に分かれます。
どうしても患者さんを持ち上げなければいけないタイミングがあるのでお大人数が必要になります。
ブリーフィングの内容としては
- 手順の確認
- 不安や疑問点の確認
これが重要です。
体位変換に関わる全ての人が共通理解していないと必ず問題が起こります。
なので最も重要なのは事前のブリーフィングだと思っています。
STEP 2 体位変換
体位変換を行うにあたっては
背側だけドローシーツを敷いて行う方法もあれば
背側・腹側(お包み)にシーツを敷いて包むようにする方法などがあります。
個人的には包んでしまうのが楽だと思います。
患者さんは筋弛緩をかけていることがほとんどなので
包んでしまった方が安定しますし介助者が楽です。
その後の手順は
- ベッドの端に移動する
- 側臥位にする(このタイミングで心電図の電極を背中に変える)
- 側臥位から腹臥位にする
- 1名を除き全員で患者をフラットに持ち上げる
- 残りの1名がクッションを挿入する
概ねこの手順で実施します。
前回の記事でお伝えした論文の方法についてはyoutubeで見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=E_6jT9R7WJs&t=76s
この方法ではクッションを使用していませんが
どうしても褥瘡ができてしまうので皮膚保護剤とともにクッションを使う方がよいと思います。
本当は実際の写真を載せたいのですが・・
大体はこのような位置にクッションを挿入します。
顔はジェル状のクッションや腹臥位専用のクッションを使用します。
特に重要なのが顔と前胸部にクッションを配置することで頸部周囲に空間を作り
気管切開の場合にカニューレが圧迫されることを防ぎます。
STEP 3 その他のポイント
ちょっとしたポイントですが
軽く頭側を上げるような形でベッド全体の傾斜をつけることです。
顔面の浮腫を少しでも軽減することが目的です。
さらには眼球損傷予防でアイパッチを貼ることも重要だと思います。
眼球損傷は程度によって失明の可能性があるのでとても重要です。
腹臥位療法の継続時間としては16時間を目安にしています。
多くの論文では12〜16時間実施していることが多いです。
腹臥位後の注意点
ポイントは
- 呼吸性アシドーシス
- 循環動態の変調
- 気管チューブの閉塞
目的でもありますが1回換気量が減るということは
二酸化炭素分圧が上昇します。
そうすると当然ですが血液は酸性に傾きます(アシデミア)
肺保護戦略でもそうですが
高二酸化炭素血症を許容する(Permissive Hypercapnea)という考え方があります。
肺を保護(1回換気量を減らす)する代わりに、CO2が上昇するのは許容しようという感が方です。
つまりリスク(CO2上昇)よりもベネフィット(肺保護)の方が上回っているので良し!ということです。
なのでどこまで許容するかは医師と事前に共有しておくと良いでしょう。
また実際に腹臥位をするとわかるのですが気管吸引をするのがどうしても難しくなります。
なので体位変換後に気管チューブの逸脱や折れ曲りがないかを確認することもそうですが
気管吸引できるかも確認しておくことをお勧めします。
ECMOを使用していない限り
t気管チューブが閉塞すると呼吸ができなくなってしまいます。
腹臥位療法のリスク
合併症についてですが前回の論文に記載されている合併症を載せます。
結構抜管しているのは恐ろしい・・(実施には見たことありません)
これを見て感じて欲しいのは
急変するリスクがあるということです。
実施するのは簡単ですが
想定されるリスクは最小限に抑えなければ倫理的に問題がある治療となります。
なので勇気を持って中止するということも大事です。
これについては事前に医師と共有しておくのが重要です。
ということで具体的な手順やリスクの側面についても説明しました。
ボリュームが多くなってしまったので、気管挿管前の腹臥位療法については次回にしたいと思います。
皆様少しでも腹臥位療法がイメージできたでしょうか?
少しでも参考になれば幸いです^^
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では歯磨いて寝ろよ!
by看護師父ちゃん