人工呼吸器 はじめの一歩(看護学生・新人・ICUに異動したて方向け)
皆様こんにちこんばんは!
今月は勤務状況が厳しい看護師とーちゃんです・・!!(でも元気!)
今回は人工呼吸器のおはなし。
ICUでは最もメジャーな医療機器の1つではないでしょうか。
ICUに異動したての頃って、まずは人工呼吸器の患者さんを受け持つことが多いと思います。
最初は教科書を見て勉強するんですが「教科書に書いてあるモードの名前と臨床で見ている人工呼吸器のモードの名前が全然違う・・・」
ということが起こるんですよねぇ。
でも大丈夫です。
基本の設定を覚えるだけで、モードの名前に囚われることなく理解することができます。
ということで、早速いきましょう!
この記事を読むことで・・
- 人工呼吸器の仕組みが分かります
- 人工呼吸器のモードの基礎が分かります
- 人工呼吸器の用語が分かります
<今日の内容>
人工呼吸器の適応を簡単に理解する
人工呼吸器の適応は各種ガイドラインなどで確認はできますが、初学者にとっては少し分かりづらい。
どうすれば簡単に理解できるか?
答えは簡単で、呼吸の成り立ちを理解すると分かります。
なぜかと言うと??
人工呼吸器の出番=正常な呼吸ができなくなった状態
だからです。
正常な呼吸の成り立ち
正常な呼吸の成り立ちを簡単に示すと
- 脳(呼吸中枢=延髄)から呼吸の指令が出る
- 脊髄を通って呼吸筋に伝わる
- 呼吸筋(大部分は横隔膜)が働き呼吸(吸う・吐く)が成立する
- 肺胞と肺毛細血管でガス交換(酸素と二酸化炭素の交換)を行う
ざっくりと、このような形になります。
この一連の流れがいわゆる「外呼吸」と言われる呼吸になります。
(内呼吸もありますが、これはショックと深く関係します)
人工呼吸器の出番(適応)とは上記のどれかが機能しなくなる状態です。
3つにまとめると
- 中枢の障害により指令が上手く出せない
- 筋肉が機能しないあるいは筋肉への情報伝達が上手くできない
- ガス交換が上手く機能しない(ガス交換障害)
簡単に言えば、この3つの状態になると人工呼吸器が必要になります。
具体的に言うと
1は脳出血により延髄が圧迫されて、呼吸中枢が障害されると自発呼吸が出なくなります。
2は神経筋疾患により筋肉の萎縮や神経伝達ができない状態になると指令は出ても呼吸運動ができなくなります。
3は肺炎などにより障害されますが、これは程度によって酸素療法などによってカバーできることもありますね。
【ガス交換】
肺胞の周りには毛細血管がびっしりくっついた状態になっています。
イメージとしては肺胞がぶどうの房になっていて、その周りにマスクメロンの皮みたいに網状に毛細血管がまとわりついている。こんなイメージです。
そこで酸素と二酸化炭素の受け渡しが行われています。
<ガス交換;イメージ図>
人工呼吸器の仕組み
人工呼吸器の仕組みは、いくつかのセクションに分けて考えます。
まずはアウトレット(中央配管)から酸素と空気を人工呼吸器に供給します。
酸素濃度(FIO2)はブレンダーで空気と酸素を設定の割合でブレンド(混ぜて)して患者さんに提供します。
例えばFIO2:0.6(60%)で設定すると、酸素の割合を6割であとは空気を4割に調整されます。
仕組みで覚えておきたいのは、上記の図は加温加湿器を使用するため、吸気と呼気の回路が分かれていることです。
施設により異なりますが、人工鼻(HME:heat&moisture exchanger)を使用している場合は吸気と呼気どちらも人工鼻を通過するような回路構成になっています。
吸気弁と呼気弁はそれぞれ吸気時は呼気弁を閉じて患者側にガスを送れるように、そして呼気時は吸気弁を閉じて人工呼吸器にガスを戻すようになっています。
押さえておきたい3つのモード
最近ではAIがウィニングしてくれたり、横隔膜電位などの新たな指標をトリガーとするなど、人工呼吸器に関する用語ははますます複雑になっていて、初学者を人工呼吸器嫌いにする要因の1つになっているのではと思ってしまう^^;
そして人工呼吸器を販売している各社によって名称が異なるため、初学者にとってはカオスな状況に。。泣
私自身、とことん突き詰める!と言うタイプではなく、簡単に考えてその知識を応用していく方が好きなので、まずはシンプルに知識を入れていくことが大事だと思っています。
ということで!
まずは基本の3つのモードを覚えましょう!
これとPS(プレッシャーサポート/ピーエス)を覚えれば名前が変わっていても惑わされることはなくなります。
A/C アシスト/コントロール
このモードは導入初期にまず使われることの多いモードです。
臨床ではアルフベッドをとってエーシーなどとも言われます。
このモードには2つの役割があります。
■1つ目の役割
まず1つ目の役割として、C コントロールがあります。
これは、吸い始めも吸い終わりも機械(人工呼吸器)が関与します。
つまり人工呼吸器が全ての呼吸をコントロールしていると言うことです。
例えば、COVID-19の患者さんが心肺停止になって人工呼吸器管理を始めたとします。
患者さんは心肺停止になっているので、自発呼吸はありませんよね?
なので、人工呼吸器は1分間の呼吸回数や換気量(VCVの場合)をどのくらいにするのか、何秒吸うか?を決めておかなければなりません。
例えば上記の心肺停止の患者さんにモードをA/Cに設定して、換気回数(f)を15回/min・1回換気量を500mlで設定しましょう。
設定【モード:A/C 換気回数:15 回/min 1回換気量:500ml】
換気回数は1分間当たりの回数なので、60秒間に15回呼吸をするということは
4秒に1回(60÷15=4)、決められた吸気時間と換気量で人工呼吸器からガスが送られます。
ちなみに、1回の換気量は500mlで回数は15回なので、1分間のトータルの換気量(分時換気量;MV-Minutes Volume)は。。
500ml×15回=7500ml=7.5L/min
になります。
この7.5Lを覚えて置いてください。あとで大事になってきます。
■2つ目の役割
2つ目はA アシストの部分です。
コントロールは吸い始めと吸い終わりは機械が決めていましたよね?
アシストとの大きな違いは、「吸い始めは患者さんが決める」ことです。
ただし吸い始めのきっかけを患者さんが作ったあとは、機械が吸い終わるまで責任を持って面倒を見ます。
図で見てみましょう。
先ほどの心肺停止の患者さんが覚醒して自発呼吸が出てきました。
設定【モード:A/C 換気回数:15 回/min 1回換気量:500ml】
コントロールと異なり、呼吸のタイミングは患者さんに吸ったタイミングよって決まります。
吸い始めは患者さん、それ以降は機械が担当するので
吸ったタイミングで、決められた換気量を送ります。
この患者さんの自発呼吸の回数が20回/minだったとしましょう。
分時換気量(1分間の換気量)は。。
500ml×20回=10,000ml=10L/min
となります。C コントロールの時と同じ設定でも患者さんの呼吸によって分時換気量が大きく変わるのが分かると思います。
これがAの部分とCの部分の違いです。
これが合体したモード(A/C)なので
自発呼吸がない(設定の回数より少ない場合も含む)場合は全て機械が担当する。
自発呼吸があれば、全ての自発呼吸に対して決められた設定で機械がガスを送る。
ということになります。
自発呼吸が不安定な患者さんや肺の状態が悪い患者さんには適しているモードです。
ただし・・
呼吸のタイミングを患者さんが決められるとは言え、全ての自発呼吸に対して機械任せの呼吸が送られてきます。(逆に言えば吸い始めてからは患者さんが関与できない)
そうすると、しっかり覚醒して自発呼吸がある患者さんにとっては自発呼吸とぶつかってしまう(非同調)原因にもなります。
臨床でのイメージは
導入初期はA/Cで、肺の状態が改善したり意識障害が改善したら後に説明するCPAPに変更するというイメージでOKです。
ボリュームが多くなってきたので、次回にSIMVとCPAP、PSを説明します!
ここまで読んでいただいてありがとうございます^^
では歯磨いて寝ろよ!
by 看護師と〜ちゃん