かんごし父ちゃんのナース駆け込み寺!

このブログは認定看護師として集中治療室で勤務するかんごし父ちゃんが、困ったナースや看護学生が気軽に学べる内容の情報や2児のパパとして育児に奮闘する日記をゆる〜く描いたブログです。

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鎮痛薬のまとめ

皆様こんにちこんばんは!

 

勤務変更や施設のいろいろな仕事が立て込んで、気づけばブログ更新が遅くなってしまいました・・いけませんね・・・(*o*)

 

ということで、前回は鎮静をメインにお話ししました。

 

nurse-daddy.hatenablog.com

 

鎮静の結論としては、、

  • 鎮痛優先で管理して鎮静を調整する(鎮痛ファースト)
  • 深鎮静は様々な弊害がある
  • 鎮静深度は必ず個別で決定する

 

ということでした。

 

今回は鎮痛薬のお話をしていきます。

 

この記事を読むことで

  • 鎮痛薬のキホンがわかります
  • 先行鎮痛の重要性がわかります
  • 鎮痛補助薬の重要性がわかります

 

ではいきましょう!

 

 <今日の内容>

 

 

痛みの本質と患者への影響

痛みは健康な人にも現れる不快な症状の一つです。

 

強い痛みや持続的な痛みがあれば、健康な人でもQOL(生活の質)が低下します。

 

患者さんは疾患を抱えている中で、痛みが生じればさらにQOLが低下することは想像がつきます。

 

痛みについて、痛み・不穏・せん妄のガイドライン(通常J-PADガイドライン)をまとめる、、

  • ICUにいる患者は安静時でも強い痛みを経験している
  • ICUにいる全ての患者で痛みを評価すべき
  • 痛みによって引き起こされるストレス反応は患者に有害事象を及ぼす

 

痛みの項目について最初の部分をまとめるとこんな感じです。

 

特に痛みの有害事象としては、、

  • 交感神経を賦活化し内因性のカテコラミンが増加
  • カテコラミンにより細動脈が収縮し組織還流不全から組織酸素分圧が低下
  • 異化(分解)が亢進し筋タンパクが分解→筋肉の衰退
  • ナチュラルキラー細胞の活性低下により白血球の活動低下→免疫応答反応の低下
  • 慢性疼痛に発展し活動性が低下→静脈血栓ができやすくなる

 

やっぱり痛みって良いことがないって分かりますね^^;

 

痛みの評価方法

ICUでは痛みの評価方法には様々なツールがあります。

 

原則は患者さんの自己申告です。

 

ということは、NRSやVASが基本になります。

 

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NRSは痛みを0〜10段階で表現する方法です。NRS>3で介入が必要と言われています。

 

 

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VASは海外ではメジャーですが、日本ではあまり馴染みがないと思います。

これは患者さんに指差してもらって、その長さで痛みを評価するもので、VAS>3cmで介入を必要とします。

 

 

出典:日本緩和医療学会(https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/02_02_02.php)

 

 

鎮静や意識障害によって自己申告できない場合はCPOTやBPSを使用して客観的に痛みを評価することが重要です。

 

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出典:日本版集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン(https://www.jsicm.org/pdf/2015-J-PAD-guideline.pdf)

 

それぞれカットオフ値はCPOT>2、BPS>5とされ、カットオフ値以上の数値であれば、介入が必要です。

 

よくある臨床場面としては、持続の鎮痛・鎮静を行っている人工呼吸器患者さんで、顔をしかめて体動が多くなった時に、まずは痛みを評価して鎮静を増やす前に鎮痛の量を増やしたり、フラッシュしたりすることが考えられます。

 

鎮痛剤の種類

■麻薬性鎮痛薬

フェンタニル

集中治療ではポピュラーな薬剤の一つで、作用発現は1〜2分と早く活性代謝産物がないのが特徴である。活性代謝産物がないということは、薬物が代謝(分解)された際に、分解された物の化学構造が変化し、毒性や薬理効果が増強することがないことを示します。

 

半減期(効果が半減する時間)は2〜4時間とされています。

 

また、フェンタニルは天井効果がないことも特徴です。

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麻薬拮抗性鎮痛薬と比較して、作用発現までの時間が短いこと、薬のキレが良いことが特徴ですね♪

 

モルヒネ 

モルヒネはがん領域では広く使われますが、肝/腎で薬剤が蓄積するため、臓器障害を呈する集中治療では使うことが少ない薬剤です。

 

ECMOの患者さんではフェンタニルが膜に吸着して優位に減少する一方で、モルヒネは膜に吸着しにくい特性から、ECMO患者ではモルヒネが選択されることがあるようです。

 

アセトアミノフェン 

昔は内服でしか使用することはありませんでしたが、最近では静注薬として頻用されます。

 

作用発現は15分と効果発現までは比較的早いです。

これは15分かけて投与した時に直後の血中濃度が最大になるため、効果発現は15分とされています。

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時々1時間とか30分かけてとオーダーが入っていることがあるので、先生にちょっとちょっと攻撃を仕掛けてます笑


アセトアミノフェン は補助鎮痛薬としてとても重要で、アセトアミノフェン を補助鎮痛薬として使用した研究は複数報告されています。

 

DEXACETトライアルでは、心臓外科の術後患者においてプラセボと比較してアセトアミノフェン 投与群(介入群)でせん妄の発生率が優位に低下したという結果でした。

 

今後ますますアセトアミノフェン の使用量が増えていくかもしれませんね♪

 

先行鎮痛は必要か?

先行鎮痛というのは、何か侵襲的な処置や痛みが予想される処置の前に、予め鎮痛薬を投与することです。

 

これについては、経験的に実施している方もいますが、ガイドラインでも推奨はされています。ただ、ガイドラインにおける状況は胸腔ドレーン 抜去時という限定的な表現ですので、臨床へのインパクトは低いように感じます。

 

 

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と〜ちゃんは術後の患者さんを受け持った時は、清拭などの前にアセトアミノフェン を投与することが多いです。もちろん実施する15分前です^^

 

感覚的にはとても痛みは少なくなる印象があります。

 

やはり術後の患者さんは、これから離床!という方が多いので「体動=痛み」というイメージがついてしまうと、離床にも不安が強くなります。

 

なので出来る限り痛みは取り除くことが重要だと思っています。

 

ただし、離床の前に使用する場合には血圧低下に注意が必要だと思います。

 

アセトアミノフェン を使用した論文の中には、有害事象として血圧低下が生じたという記載もあるからです。

 

 

ということで今回は痛みと鎮痛薬についてお話ししました。

ガイドラインはインターネット上で誰でも見られるので興味がある方は是非ご覧ください♪

 

 

では、歯磨いて寝ろよ!笑

by看護師と〜ちゃん